髭をそるシーンは渡部篤郎さんの提案で
<リョウの夫である清治は、子どものしつけに厳しく、家の中だけではなく外ではしゃぐことも許さない。雨の夜、珠にはだしでカナリヤの餌を買いに行かせる。洗濯後の羽織の仕上がりが気に食わず、リョウや珠を怒鳴りつけたこともあった>
清治さんは、今でいうモラハラ(モラルハラスメント)のような言動があると思います。ただ、劇中は明治時代ですから、当時はこういったことがあったのか気になって、監督さんとよく話し合いました。清治さんが何かをする時、私たち家族がどんなリアクションを取るかがとても大切だと感じていたんです。私たちがどう驚くかで、清治さんは悪い人にもなるし、本当は思いやりのある人、にも見える。リハーサルの段階で監督と細かく話しました。
私がリョウだったら、清治さんから逃げるかな(笑)。たとえば、カナリアを逃した時に、リョウは清治さんに怒鳴られます。子どもを守るために突発的に逃げたリョウの気持ちはよくわかる。もうこれ以上怒鳴られたくなかったのかもしれません。今、清治みたいな人がいたら大問題ですよね。この場面は、リョウがどのくらい恐怖を感じればいいか、微妙なさじ加減が難しかったです。
それでも、リョウにとって清治さんは「愛して結婚した人」であり、「リョウは清治の本当の姿を知っているに違いない」と思って演じてきました。2週目に、リョウが清治さんの髭をそるシーンがありますが、これは実は台本にはなかったんです。現場で渡部さんから提案があって急遽撮影しました。清治さんとリョウさんの関係が伝わる素敵なシーンになったと思います。この時の撮影では、あまりにも渡部さんの肌が綺麗でツルツルで、つい「毛穴がないですね」とか言ってしまいました。
渡部さんは、清治とは違って本当に気さくな方。待ち時間はずっとご家族の話をしていますし、私の子どものことも気にかけてくださる。でも、スタジオに入った瞬間に、ものすごいオーラを発するので、キャストもスタッフもシャキーンと背筋が伸びる感じになります。でも、それはいい刺激になりますし、スタジオに入った瞬間から清治さんが始まっていると感じています。