求められるのは「身体能力」よりも「順法精神」

CIAが公開している「よくある誤解」のリストを見ると、多くの人は驚かされるだろう。たとえば、「身元調査が厳格すぎて、普通の人間は採用されない」というイメージがあるが、大学の講義を数回欠席したり、駐車違反の切符を切られたりした程度で不合格になることはない。

また「タトゥーはNG」「名門大学出身者しか採用されない」といった話も事実ではない。CIAは2年制のコミュニティ・カレッジを含む多様な教育背景を持つ人材を募集しており、中国語やペルシア語といった外国語も、入局後に体系的な教育を受けることができる。

『面白すぎて時間を忘れる「スパイ」の世界: 実在のスパイから世界の秘密工作まで』(著:落合浩太郎/三笠書房)

映画やドラマのスパイは、格闘術の達人であり、拷問にも耐え、最新兵器を自在に操る。しかし現実のCIAが重視するのは、そうした超人的な能力ではない。世界情勢を分析し、国家の意思決定を支える分析官をはじめ、多くの職員にとって、派手なガジェットや格闘スキルの腕前は必須条件ではないからだ。

彼らが志願者に本当に求めるのは、高い知性と冷静な判断力、そして何よりも「誠実さ」と「順法精神」である。

現実のスパイは、意外と真面目 イラスト:芦刈将

実際、採用審査では過去の行動や生活態度が細かく確認される。たとえば、学生時代に違法ダウンロードを繰り返していたようなケースは、「ルールを軽視する人物」と見なされる可能性がある。

国家の最高機密を扱う組織にとって、能力以上に重要なのは、「信頼できる人物かどうか」なのだ。