現在放送中の、連続テレビ小説115作目『ブラッサム』。本作のモデルは、明治から平成まで激動の時代を駆け抜け、生涯にわたって数多くの恋愛と結婚、離婚を経験してきた宇野千代です。同じ時代を生きた男性作家たちは、彼女にまつわるエッセイや、彼女をモデルにしたと思われる小説を書き残しています。そこで今回は『宇野千代をめぐる男たち』より、尾崎士郎のエッセイをお届けします。
出した手紙・貰った手紙 尾崎士郎
一番印象的なのは、梶井基次郎君とのことである。
まだ宇野千代氏と一緒にくらしていた頃、僕が川端康成君の紹介で伊豆の湯ケ島に行っていた時のことだ。
向うに梶井基次郎君が行っており、僕たちも親しくなったのだが、ザックバランに云うが、いつか梶井君と宇野千代氏との間に精神的に急速度に親しさが増していったのだった。
この時の梶井君の態度が男同士の感情としてどうしても納得出来ず、そこに次第にわだかまりが生じてきたのである。
僕自身としては、女性の問題については割に恬然(てんぜん)としておれたと思うのであるが、梶井君から受けるものが、男対男の感情として理解出来なかったのだ。