食べる機能の衰えが、全身の衰えにもつながることを実証するデータがあります。65歳以上の高齢者を対象に、オーラルフレイルの人と、そうでない人を4年間にわたって追跡調査したところ、オーラルフレイルの人は、そうでない人に比べて、身体的フレイル、要介護、死亡に至るリスクが、いずれも2倍以上も高かったのです。
ちなみに、高齢になると、痩せている状態は危険と言われています。体重と身長のバランスを示す体格指数BMIは、65歳未満では数値が高いメタボ体形の人ほど死亡率が高い一方、65歳以上では逆に低いほど死亡率が高いのです。しっかり食べることがいかに大切であるかがわかります。
なお、追跡調査は高齢者を対象に行いましたが、口のささいな機能の衰えは、40、50代から表れ始めます。オーラルフレイルの予防・対策は早く始めるに越したことはありません。
口周りの筋肉を鍛え、唾液の分泌を促す
食べるという行為は、複数の機能が連携して行われる、いわばマルチファンクションです。
たとえば一口大のステーキを口に入れると、まず前歯で噛み切り、舌を使ってそれを奥歯に運んで噛み潰します。次に、肉を反対側の奥歯に移動して噛み潰す。まだ肉が硬いようなら再び前歯で刻んでもう一度奥歯へ。唾液で潤しながら肉がほどよい軟らかさになったら喉に送り出し、飲み込みの反射で喉を通過させます。
私たちは無意識のうちに、歯、唇、舌、喉、そして唾液と、いろいろな機能を使って日々食事をしているのです。そのため、たった一つの機能でも不具合が起きると、栄養を摂ることに支障をきたします。