子どもと一緒の大切さをみしめて

浅田 それにしても、ほんとにいろんな本を読んでますね。3人の子育てをしながらだと、時間を確保するのも難しいんじゃない。

 『流人道中記』は、電子書籍も買って、昼間手が空いたときには本で、夜は子どもを寝かしつけながら画面を暗くした端末で、と交互に読み進めたんですよ。

浅田 正真正銘の本好きだね。

 子どもができてから、どうしても時間は取られるし、外出の機会も減って世界が狭くなるし、よけいに本の世界を求める気持ちが強くなったように思います。中でも歴史小説は、今の時代を俯瞰して見られたり、現代の自分にはできないことができたり。この魅力からは逃れられそうにありません。

浅田 それだけ本好きなのだから、お子さんたちにもしょっちゅう読み聞かせしたりしてるんでしょう。

 大きな本棚に子どもの本も並べているのですが、子どもたちは自分から取りに行って広げています。やっぱり、小さな頃から、本が目の前にどさっとある環境がいいのかな、と思って。

浅田 僕は、本が1冊も置いてないような家で育ったんだ。

 そうなんですか。それも驚き。

浅田 家族全員、本を読む習慣がなかった。だから、逆にないものねだりで、のめり込んだわけです。貸本屋さんというのがあってね、1日で返さなくてはいけないから一生懸命読みました。意外に、家に本のないほうが読書家になるっていうのも、あるんだよ。お宅は、もう手遅れだろうけど。(笑)

 ふふふ。そうですね。

浅田 この間は、お子さんたちとずっと家で過ごしていたわけですね。

 はい。でも、今度のコロナ禍では、もちろん私たち大人も大変だったのだけど、一番かわいそうなのは子どもたち。普通の学びや友達と接する機会が、一気に奪われてしまって。

浅田 学校に行っていれば、まがりなりにも、学びの公平性が保たれるんだけど。ただねえ、きっと多くの子どもたちは、親と一緒に過ごせる喜びも、感じていたはずなんですよ。

 ああ。いつも仕事、仕事で忙しそうな親が家にいる、って。

浅田 そうです。僕は親との縁が薄くて、それが自分の至らなさに影響している、というコンプレックスを持っているのです。今回のことを機に、子どもと一緒にいる時間の大切さ、貴重さに、世の親御さんたちにはもう一度気づいてほしいと思うんですよ。

 コロナ禍で、先生ご自身が気づかれたことはありますか?

浅田 とにかく、「自分には、読んで書くことしかない」というのが、はっきりわかりました。打ち合わせだとか、会食だとか、ずいぶん余分なことに時間を使っていたんだなあ、と(笑)。杏さんのお仕事も、そろそろ本格的に?

 秋から再開するお仕事が多いのですが、まだまだ先がしっかり見通せない状態が続きそうです。

浅田 本当に、早く落ち着いてもらいたいものです。

 そういえば、父も兄も先生の作品に出させていただいているんですよね。

浅田 そうそう。杏さんだけがまだだね。

 いつか、演じさせてください。それを3つ目の夢にしたいです。