日々の食卓は新鮮な食材で

今暮らしている家はオフィスも兼ねており、二人いる秘書のうちどちらかが、昼間うちにやって来ます。また、長年一緒に暮らしてくれているブラジル生まれのイウカさんという女性がいます。他人ですけど家族ですね。私は2017年に夫を亡くしましたが、常に一つ屋根の下に人の気配があるため、それほど寂しさは感じません。しかも夫の死後、二匹の猫がうちにやって来たので、それなりに賑やかです。

毎朝5時半頃に目を覚まし、7時までは自室でニュースを見るなどして過ごします。7時半頃、コーヒーを淹れてイウカさんと朝食を食べ、その後、書斎で原稿を書きます。昔は1日に10時間、長いときには15時間くらい書いていましたが、さすがに最近は、身体に鞭打ってまで書こうとは思わなくなったので、午前中で切り上げることが多いですね。気障に聞こえるかもしれませんが、小説にしろエッセイにしろ、私はこの65年間で一度も、「書くことがない」と思ったことがないのです。今でも常に書きたいことがあります。

昼食は通常、イウカさんと秘書と三人で食べます。午後は、隣町まで食材を買いに出かけることも──自分のことを魚の目利きと思っているので、人に任せたくないのです。夕食もイウカさんと一緒です。この歳になり、ともに食卓を囲む人がいるというのは、恵まれていると感謝しています。

三浦半島にも家があるので、月に2、3回は海の空気を吸いにそちらに出向きます。2、3日滞在することもあれば、1泊で帰ってくることもある。じゃがいもや菜っ葉を植えているので、行くと収穫をし、近くの港に揚がった新鮮な魚を買って帰ります。せっかくイキのいい魚が手に入ったのだから、「食べに来ない?」と友人に声をかけることもあります。

昔から食べることと料理が好きで、面倒と思ったこともありません。材料を見たら、何を作ろうかパッと思い浮かびます。お惣菜を買ってきてすませることは、まずしません。新鮮な材料を使い、手をかけすぎずに食べるのが一番。昼食は一汁一菜にお漬物くらいで、夕食は小鉢などを添えて。動物性たんぱく質と野菜のバランスは意外にいいんですよ。