イラスト:マツモトヨーコ
新型コロナウイルスの感染拡大以来、どんな対策を講じ、どれくらい行動を自粛すればいいのかに頭を悩ませ、ストレスを感じている人は多いのでは。作家の曽野綾子さんは、自分の気持ちを基準に判断することが大切だと言います(構成=篠藤ゆり イラスト=マツモトヨーコ)

わからないものを恐れてもしようがない

世間では新型コロナウイルスのニュースや情報が溢れているようですが、私はとくに心が揺れたり、不安になることはありません。コロナについて、考えることもありません。もちろん、ひとつの社会的な事実として、少しは理解しようとしていますよ。ただ、自分がコロナウイルスに感染するかもしれないと怯えたことはないのです。

コロナ禍が始まって以来、不安とストレスのせいで疲れている人もいるそうですね。不安から解き放たれるためには、不安の種を取り除かなくてはならない。しかし、できることと、できないことがあります。たとえば実家の破産や、夫のリストラなど、人間関係にさえどうにもならないことは、世の中にたくさんあります。ウイルスは、目に見えないので、取り除くことができない。どこにいるかわからないものをむやみに恐れても、どうにもなりません。ですから、考えないことにしているのです。

私はコロナ前も今も、生活を一切変えていません。友人と会いたければ会いますし、外出自粛期間中も、必要とあらば出かけていました。もっとも、頻繁に外出していたわけではありません。もともと人が大勢いるところは、疲れてしまうので苦手です。ですから文壇のパーティなども、ゼロではありませんが、作家としてスタートした23歳から88歳の今まで、数えるほどしか出席していません。

私は行政のお達しやマスコミの情報によって自分の行動を左右されたくはないのです。自分の判断でものごとを決めるケチな「逆らい」の精神があるからこそ、作家を続けているのでしょう。苦手なこと、イヤなことは避けて通り、自分がやりたいことや好きなこと、いいと思ったことをさせてもらう。それが私の生き方です。