「午前中は執筆に集中していますが、昼ご飯を食べた後はどうしても眠くなる。そんなときは、大好きなゴールデンボンバーの曲をかけて活を入れます」(桜木さん/2015年撮影:本社編集部)
本日の『あさイチ』に登場する作家の桜木紫乃さん。桜木さんが直木賞を受賞した作品『ホテルローヤル』が今年11月に映画化されます。今回特別に、直木賞を受賞した7年前、弊誌のインタビューに応えた記事を再度配信します。作品の舞台となったラブホテルを実家が営んでいたこと、作家への道を歩み始めた経緯など、桜木さんの半生はいかに?(構成=内山靖子)

ゴールデンボンバーの歌詞に刺激を受けて

「ウソでしょう?」というのが、直木賞受賞の知らせを聞いたときの率直な気持ちです。「とれるわけがない」と思っていたので、選考結果を待っている間は、はなから「残念会」のつもりで編集者さんたちと居酒屋で楽しく飲んでいたんです。

「全員コスプレをして盛り上がろう!」と、私は以前から大ファンだったゴールデンボンバーの鬼龍院翔さんが愛用しているタミヤのTシャツを着て。ところが、そこへまさかの「受賞」の知らせが。着替えを持ってきていなかったので、そのTシャツ姿のままで受賞会見に出席することになりました。

直木賞をいただいて、「嬉しい」というよりも「責任重大」という気持ちのほうが強くて。もちろん、嬉しいことは嬉しいのですが、「桜木紫乃」がペンネームということもあり、どこか自分の身に起こったことではないような……。

北海道の自宅に帰ってからも、私の暮らしはあまり変わっていません。近所にあるおいしいザンギ(から揚げ)のお店からデリバリーをとり、出版社が贈ってくださったシャンパンを開けて家族でお祝いをしましたが、特別なことはそれくらい。あとは、主婦としての日常にスーッと戻っていきました。賞をいただいたとはいえ、家事は待ったなしですからね。(笑)

ただ、ひとつ助かったのは、大学生の息子と高校生の娘が夏休みに入っていたこと。おかげで、娘のお弁当を作る必要がなく、そのぶん、朝の家事がラクできる。また、休み中ということで、娘が洗い物をしてくれたり、息子が夕飯にパスタを作ってくれることも。受賞以来、何かとバタバタしている私に気を使い、子どもたちが自然と家事に協力してくれるようになったのが嬉しいです。

普段は、朝、夫が仕事に出掛け、子どもたちが学校に行っている日中に原稿を書いています。いやぁ、専用の書斎なんてありません。納戸のなかで山積みになっている荷物の一番奥が、私の執筆スペースです。

午前中は執筆に集中していますが、昼ご飯を食べた後はどうしても眠くなる。そんなときは、大好きなゴールデンボンバーの曲をかけて活を入れます。なんと言っても、鬼龍院翔さんの歌詞が素晴らしい。好きな曲は「抱きしめてシュヴァルツ」。言葉の選び方がとても斬新で、小説を書くうえで大いに刺激になっています。

そうそう、実は、その鬼龍院さんとラジオの番組でお目にかかれることになりました。夢のような話です。北海道の小さな街でコツコツと小説を書いてきただけなんですが、こういうことがあると直木賞って本当に影響力のあるすごい賞なんだと、あらためて実感します。発言には気をつけようと思いました。