これからの山登り

新たな世界規模の感染症という試練が襲い、山へのアプローチが大きく変わった。2020年というこのときを、おそらく生涯忘れないだろう。そもそも今回の感染症に関しては、山登りほど良きものはないだろうと考えている。人に接するのも少なく、密にもなりにくい。その上で、健康的な運動ができるとあれば、むしろ山登りは奨励されてしかるべきモノだと思える。ただし、ケガなどでレスキューされることを考えれば、それなりの覚悟をしなければならないだろう。特に山小屋での過ごし方もガラリと変わり始めている。

これからの山登りがどうなっていくのか。それぞれ個人が考え、行動しなければならないのか? それとも、国もしくは、山の活動団体が、指針を促すのか? 柔軟な考え方をする登山者に任せてしまうという方法もあるが、四角四面のやり方では、うまく続かないかもしれない。いずれにしても、僕は山に登りたい。

「なぜ山に登るのですか?」山登りをする人にかけられる言葉。その質問にはこう答えたい。

「それが日本にあるからです」

日本の山という、海外から見ればうらやましい限りの四季に彩られた峰々のつらなり。高山の花や鳥たち、飛びかう蝶の群れ、どうどうとしぶきをあげる滝。沢の流れの清らかさ。息をのむ程に眩しく輝く紅葉。そして毎日のように新雪が降り積もる、ジャパウと呼ばれる雪山。日本の山という宝物を、ひとつひとつ数えるように登る。ひとつの山の頂から、さらに遠くのもうひとつの山を見つける、その喜び。

さあ、山にでかけてみませんか。アナタが歩こうとしている山道は、長い間多くの山好きビトが、汗を流し続けた喜びの道なのです。その道を、是非繋いでもらいたい。一歩一歩。山はいつでもどこでも、一歩一歩。