左から、清水ミチコさん、ヤマザキマリさん、榎木孝明さん(撮影:大河内禎)
不安の多いこの時期、清水ミチコさんが「会いたい」と思ったのは、榎木孝明さんとヤマザキマリさん。考えを深め、自分に問うことを繰り返してきた2人は、初対面で意気投合。そこには、ときに「変な人」とカテゴライズされてきたという共通点がありました。前編に続き、話はさらに"地球規模"に!(撮影=大河内禎)

<前編よりつづく

人類は滅びても地球は残る

清水 榎木さんは東日本大震災が起きた際、なにをしていましたか。

榎木 喫茶店にいました。ガラスが大きく歪んで、みんながキャーッと叫んで。そしたら、そこにいた車椅子のおばあさんが一言、「人間、死ぬときは死ぬんだよ!」って言ったんです。

清水 すごい。何者なんだろう。

榎木 でもその一言で、私もすーっと平常心に戻りましたね。

ヤマザキ 日本は震災大国ですし、実はみんな、ある程度受け入れる心というか、「諦観スイッチ」みたいなものを持ち合わせているんじゃないかと思ってるんです。

榎木 そうかもしれない。いま私が出ている大河ドラマでは、ラストの山場が本能寺の変になります。光秀が謀反を起こした理由には、怨恨説とかほかに黒幕がいた説とか野望説とかいろいろありますし、多くの映像作品では、信長が最後まで弓矢を引くシーンが描かれます。でも私が夢で見た信長は、まるでじたばたしていなかった。まさに諦観。光秀がきたと知って、「そうか」と納得した様子でした。

ヤマザキ 説得力がありますね。

榎木 光秀も、怨恨だけでなく、国の行く末を思って彼なりの正義で動いていた。「やった以上、責任はとる」といった感じで、おたおたしない印象を受けました。

清水 榎木さんが会った、車椅子のおばあさんみたいですね。

榎木 私は、コロナウイルス自体もひとつの生命体と捉えているんです。敵じゃない。むしろ気づきを与えてくれる存在だ、と。

ヤマザキ うわあ……。実はいま榎木さんがおっしゃったことと同じことを、昨日仕上げた原稿に書いたばかり。

清水 お2人は、通じ合うところがすごくあるなあ。

ヤマザキ ほかの動物も感染症にかかるけど、別にあらがわないですよね。なぜ人間だけが長生きしないといけないのか。そんなに特別な生き物なのか。地球で一番えらいような顔をしているのは、知性があるから? でも人間は、温暖化の要因をつくったりして、地球にとってはむしろウイルスみたいな存在じゃないですか。

榎木 人類が滅びても、地球は地球で変わりなく残り続けることを、意外とみんな忘れていますよね。46億年の地球の歴史を思えば、人間の時間なんてちっぽけなのに。

ヤマザキ 恐竜の時間よりも圧倒的に短いですからね。昔人間っていう生物が生息していたらしいね、となる可能性は大。榎木さんのお話が私の考えとシンクロして、なんだかホッとしました。