もし誰かがうちの家をボロいって言ったら

四畳半の真ん中には掘りゴタツがあり、お風呂に面した壁には、薪で焚くためと思われる穴の跡もある。廊下も玄関も妙に広い。対外的な間取りは三部屋と台所で3Kになるのだろうが、私と小雪(こゆき)は玄関と廊下を加え、我が家の間取りを3RGK(3部屋・廊下・玄関・キッチン)と呼んでいた。その上、玄関と勝手口以外のすべての部屋から出入りできることも自慢だった。便所にも風呂にも台所にも大きな窓がついていて、その気になればそこからも出入りできた。

平屋での暮らし(イラスト:服部小雪さん)

私はもう一度、「誰かがボロい家って言ったのか?」と玄次郎に聞いた。玄次郎は私から目をそらして、首を振る。

「いいか、もし誰かがうちの家をボロいって言って、そいつがマンションに住んでいたら、入口が一つしかない牢屋みたいな箱に住んでるくせによって言ってやれ、わかったな」と私は言った。

「もし、新しい一軒家に住んでる奴だったら……」

「イッケンヤってなに?」

「マンションじゃない普通の家だよ」

「二階建ての?」

「そう、二階建ての。そんな家に住んでいる奴だったら、プラモみたいな家のくせによって言ってやれ」

「二階建ての家ってプラモみたいに壊れるの?」

「いや壊れない。パネル構造は頑丈だ。だがプラモみたいにすぐできて、安っぽい」

「本家のおばさんみたいな家だったら?」

我が家の裏には鎌倉街道の枝道があり、本家と呼ばれるような豪農型の家が広い敷地に建っていた。

「そういう家の奴にバカにされたら、おまえの家はかっこう良くていいなあって、言うしかないな」