巨大な海を濾過する小さなアナジャコたち

アナジャコの巣穴がエサを取るためにとても効率的な形をしているということがわかりました。

ただ、そうした彼らの生態や巣穴は、アナジャコという生き物の食事に有効、というだけではなく、実は周辺の生態系維持にも多大な貢献をしています。

Y字型の巣穴に水を取りこみ、プランクトンなどの浮遊物を濾過した上で、また海水を排出する。これはつまりたとえるならば、空気清浄機のようなものです。
 

10センチにも満たない生き物のあまりに大きな役割

10センチにも満たない彼ら一匹一匹の力は小さいかもしれません。しかし何千匹、何万匹と集まった時のパワーはなかなかのものになります。1500ヘクタールくらいの大きさの干潟の場合、満潮時に入ってくる水のほぼ全てがアナジャコの巣穴で濾過されている、という研究報告もあるくらいです。

つまり、海底にアナジャコの巣穴がたくさん広がっていたとすれば、その干潟の海水の大部分はアナジャコの巣穴を通して濾過されている、ということを意味しており、アナジャコという生き物一種だけを調べても、自然におけるその役割や機能が絶大であることがわかります。

そして海底に見えている巣穴は、文字通り巣穴世界の入り口に過ぎません。海底の下をのぞけば、そこには底生生物が作った巣穴による、私たちの知らない大空間が広がっているのです。