そんな時、運命的に受かったのが、NHK教育の海外ドラマ『私はケイトリン』に登場するグリフェンという男の子の吹き替えでした。しかも1年間レギュラーの大役。18歳はギリギリの年齢だと思っていたので、自分にとってすごく大きかったし、拾ってもらって本当にありがたかった。あの時、声優の仕事が決まらなかったら別の道に進んでいたかもしれません。
母は、その間もずっと応援してくれていました。僕がその後、音楽活動を始めて単独ライブを開催した時は、「自分の子じゃないみたい!」とすごく喜んでくれましたね。『ドラゴンボール』の再放送ばかり観ていた子がステージで歌っているのですから、たいそう驚いたんじゃないでしょうか。(笑)
母は今でも、ライブや舞台がある時は必ず足を運んでくれます。さすがに最近は「観たよ。またね~」みたいな感想で、あとは大体、僕の体調の心配(笑)。今も昔も変わらずに応援してくれる親には、本当に感謝しています。
ドラマ出演を機に増した芝居への意欲
18歳で声優の世界に飛び込んだ後、数々のアニメキャラクターの声や洋画の吹き替えを担当。子役出身ということもあり、体を使った演技の経験を生かして舞台にも活動の幅を広げていく。さらに2013年には、男性声優ソロアーティストとして初めて武道館ライブを成功させ、台湾や上海での海外公演も開催。誰もが楽しめるライブ構成で老若男女・国籍問わず数多くのファンを獲得し、声優界で唯一無二とも言える存在となった。それぞれの仕事への向き合い方を聞いてみると──。
声の芝居と体を使った芝居、両方やっていると、「演じるうえでの違いは?」と聞かれることがあります。僕の答えは「アイデアが違う」でしょうか。役についてできる限り突き詰めて考え、構築していく点ではどちらも同じです。
アニメーションには絵があります。表情や動き、話すタイミングが決まっているなかでセリフをあてるため、あとはそこにどれだけ思いをのせられるかの勝負になる。ある意味、制限のある作業ということですね。一方で、アニメーションだからこそヒントをもらえる面もあるんです。今はこういう速さで話しているからこんな感情なんだ、といったように。キャラクターの情報が多いぶん、演技の手助けになります。
声優として演じる際には、自分の芝居を作品の質感と合わせることも大切です。エンタメ色の強い作品でナチュラルすぎる声の芝居をしていたら浮いてしまいますが、それが自然な世界観の作品だったら素敵に聞こえますから。