家族3人が病に。最悪の年に出合って
「笑いヨガに命を救われました」と言うのは、愛媛県に住む白石敬子さん(69歳)だ。敬子さんは12年に乳がんを発症。手術や抗がん剤治療などを経て体は恢復に向かったものの、闘病のストレスからうつ病になり、一時はほとんど寝たきりに近い状態になってしまった。
「1年間の引きこもり生活で体重は30キロ減。しかも同じ頃、近所に住む姉が脳出血で要介護の身になり、その姉夫婦と同居している母までが胃がんで倒れたのです。本当に最悪の年でした……。そんなある日、つけっぱなしにしていたテレビから『ホッホッ、ハハハ!』という掛け声が聞こえてきて。珍しく興味を示した私のために夫がいろいろ調べてくれたのです。そして後日、松山で開かれた笑いヨガの体験講座に連れ出してくれました」
体験会に参加した敬子さんは、笑いヨガの楽しさにふれて久しぶりに気持ちが前向きになる。以来、毎日10分ずつ夫と実践するうちに気力が甦り、徐々にうつ病の症状から解放されていった。その良さを地元の人たちにも教えてあげたいと、日本笑いヨガ協会のティーチャー養成講座を受講して指導のための資格を取得。現在は「笑いクラブ」の代表としてメンバーをまとめている。
「クラブのメンバーは60~90代の約30人で、最高齢は99歳の男性です。以前は月に3回、公民館でやっていましたが、今はZoom等のオンライン会議システムで月に2回、私の自宅と繋いでいます。機械に強い人がメンバーにいるので、セッティングができない人には代わりにやってあげることも。最高齢の男性のお宅では、毎回お孫さんが画面を立ち上げておじいちゃんを呼び込むのですが、その『おじいちゃ~ん』『ハ~イ!』というやり取りが温かくて。メンバー全員、ほのぼのと幸せな気持ちになっています」
以前はクリスマス会などのイベントも開催していたが、コロナ禍の今は集まることが難しい。画面越しに、「お久しぶり!」「この前スーパーでお見かけしたわよ」などと交流する時間を皆さん楽しみにしているという。
「5年前からは、94歳の母も一緒にやっています。介護のストレスを和らげてほしくて誘いました。両ひざに人工関節が入っているのに、私の姉を介護し、自転車を乗りまわし、畑仕事までこなす、町の名物《スーパーおばあちゃん》です(笑)」
母親のチズ子さんにもお話をうかがうと、「朝と寝る前、必ずやっています。体が軽くなり、気持ちが前向きになるのがいいですね。クラブの皆さんが私のことを『おばあちゃん』『お母さん』と呼んで仲良くしてくれるのも嬉しくて。これからも楽しく続けていきたいです」と、こちらまで笑顔になるような明るい口調で語ってくれた。
「笑いヨガとの出合いは、まさにめぐり合わせでした。『ハハハ』と笑うたびに、病気をする前の自分に戻っていった気がします」と敬子さん。地域の健康促進にも貢献しながら、日々充実した時間を過ごしている。