それを書き終わると、また違う色のカードが5枚ずつ配られ、今度は自分が大切にしている自然や思い出を書くように言われました。最初に書いたのは、田舎にある母親の墓でした。それまで、お墓のことなんか思ったことがなかったのですが、『自殺』(朝日出版社、2013年)という本を書いたあと、母親のことを書いたり喋ったりしていたので、墓参りに行っていないことが気になっていたのかもしれません。あとは、海、空、公園、花と、子どもみたいなことを書きました。

次にまた違う色のカードが5枚ずつ配られ、自分が大切に思う人を書くように言われました。最初は妻です。あとは友達なのですが、友達の名前を書くと4枚埋まってしまうので、友達を外して、弟、妻のお母さん、お兄さん、主治医の先生の名前を書きました。
最後に配られたカードには、自分の大切な活動・行動を書くよう言われました。これは難しいです。ぼくは主体性が乏しいというか、自分の意思で何かをやろうと思ったことがあまりありません。これまでの人生を振り返ってみても、全てが成り行きまかせだったような気がします。

いろいろ考えた挙句、まず「人のためになること」と書き、次に「人を喜ばすこと」、それから「人から頼まれたことをすること」と書いて、あと2つがなかなか思い付かなくて、「ベストセラーになる本を書く」「所属しているバンドが売れる」と書いたのですが、ただの願望を書いたみたいになりました。

 

講師が言う枚数だけ丸めて床に捨てて行く

しばらくすると、静かな音楽が流れ始め、講師の方が穏やかな口調で「あなたに病気が発見されました」と話し始めました。なんの病気かは言わないのですが、治らない病気のはずだから末期ガンかもしれません。ガンは経験済みなので、ガンを告知された時の気持ちを思い出していました。

そして、病気はかなり重症で、もう助からないところまで来ていることを知らされて行くのですが、その途中途中で先に書いた20枚のカードから、必要ないものを講師が言う枚数だけ丸めて床に捨てて行くのです。