一部の金持ち階級だけが政治も経済も牛耳る社会
ところで、南北戦争前夜のアメリカ南部において、黒人奴隷の売買価格は1人あたり、現在の日本円に換算すると数百万~1000万円くらいしました。奴隷とは実はこのような「高級資産」であり、南部人だからといって誰でも気軽に所有できるものではありませんでした。先ほど、南北戦争前夜の米南部の人口を約900万人と説明しましたが、そのうち奴隷を所有していた層は30万人ほどであったと言われています。
共産主義の父にして『資本論』の著者、カール・マルクスは、当時の米南部に関して「少数者の寡頭支配」体制だとし、奴隷だけでなく貧乏な白人すら「ローマの最も衰亡した時代の平民のそれとのみ比較しうるほどの」、ひどい生活状態に置かれていたと指摘しています。
このように、南北戦争のアメリカ南部とは、奴隷制という人種差別体制と、富の集中によって起こった寡頭支配により、民主主義国家とはほとんど言えないような、一部の金持ち階級だけが政治も経済も牛耳る社会となっていました。
彼らはまさにその既得権益を確保するため、「奴隷制反対」を訴える共和党の大統領当選を認めず、「合衆国からの離脱」を強行し、そして自ら合衆国軍に大砲を撃ちかけて、未曽有の内戦、南北戦争を引き起こすことになるのです。その意味で南北戦争とは、いわば「セレブの反乱」でした。