『盤上の向日葵』(著:柚月裕子/中公文庫)

執筆するときはパズルか、箱庭か

松井 『盤上の向日葵』は大作ですが、あっという間に読んでしまいました。

柚月 ありがとうございます。

松井 2人の刑事が事件を追っていくストーリー展開のパートがあり、一方で桂介の過去を辿っていくのだけど、その2つが最初はすごく離れたところにあるのに、徐々に近づいていく。読者はパズルのピースを次々に受け取りながら、ワクワクドキドキ……。最後のピースがパチッとはまったとき、「こんな展開が待っていたのか」と、鳥肌が立ちました。

柚月 長編小説は、書くほうも果たして最後までページをめくってもらえるのか、ドキドキしますから。松井さんにそう言っていただいて、安心しました。

松井 あの完成形は、初めから頭の中にあったのですか?

柚月 作品を書くときは、たいてい「この絵だ」というのは、最初から決まっています。で、ピースを四隅から置いていこう、真ん中から展開しよう、このあたりで1つ真ん中に置いてみようか……。そんな感じで書き進めています。松井さんも2年前から小説を発表されていますが、どのように書かれていますか?

松井 私は、書いているうちに何回も方向転換して、できあがってみたら全然違う着地点になっていた、ということが多いですね。

柚月 もうすぐ出版される松井さんの新作『累々』も読ませていただきましたが、夜中まで夢中になって読んでしまいました。

松井 本当ですか! まだ担当編集者の方々にしか読んでもらっていないので、柚月さんが初めての読者です。お褒めの言葉をいただいて嬉しい……! 私の場合は、箱庭を作る感覚で書いたんです。箱の中に登場人物たちを入れて、上からカメラで撮っていくような。

柚月 それは女優さんならではの組み立て方ですね。