北枕で横たわる父に対面

残暑が少しだけ和らいだお盆すぎ、高校野球で私の地元の学校が劇的勝利を収め、気分よく昼下がりを過ごしていた。

野球好きの父に電話しようか。そう思いながら夕方になった。姉から父の死を知らせる連絡が来たのはそれから間もなくのことだ。父は、いつも通り昼食をとり、好物の果物を食べて、高校野球を見て勝利に歓喜。「昼寝をするから」とベッドに横たわったまま目を覚まさなかったそうだ。夕方5時過ぎ、救急車で病院に搬送されてすぐに死亡が確認された。肺炎がかなり進行しており、それが原因の病死として、解剖されることなく自宅に戻された。

私はとるものもとりあえず遠路を帰省。北枕で横たわる父に対面したのは翌朝だった。眠っているような穏やかな表情。少しだけ開いた口元。今にも起き上がって、「おお、香織か。ようもんたな(よく帰ったな)」と言いそうだった。

枕元にある浄水と、胸の上に置かれた守り刀が、父は本当に死んでしまったのだと私に教えている。これは現実なのだとはっきりわかった瞬間、動悸が激しくなり涙で前が見えなくなった。

父は末っ子の私を、とても可愛がってくれた。親元を離れて就職、結婚し帰省もままならなかったけれど、父は年に何回も体を気遣う手紙とともに野菜や米を送ってくれた。そんな思い出がよみがえり、あとからあとから涙がこぼれた。