イラスト:岡田里
突然、目の前に現れた不可思議な存在。何かを訴えたかったのか、それとも――。信じてはもらえないかもしれないけれど、かすかに、いやはっきりと感じた気配や音、姿は月日が流れても記憶にとどまっている、そんな体験を読者が綴ります(「読者体験手記」より)

始まりは、うたた寝の最中だった

いまから40年以上も前、青春真っただ中の高校時代のこと。片田舎の公立高校に通っていた私は、ひたすらハンドボールのクラブ活動に打ち込む日々を送っていた。

定期テストの1週間前から、クラブ活動は休止となる。不思議な体験はこの期間に始まった。

学校が終わり、帰宅するとすぐにこたつでうたた寝してしまった私。ふと気がつくと、夕食の準備をする母と祖母を、天井から見下ろしているような映像が視界に映った。

2人の声も、トントントンと包丁がまな板を叩く音までもリアルに聞こえてくる。しかし私の体は、コタツの中で身動きひとつとれず、声が出ない。

大きな圧で体全体を覆われてしまい、意識だけが自在に動き回り、母たちを眺めている状態だ。この時間が永遠に続くのかと思った途端、私の意識は消えた。

あれが俗にいう「体外離脱」「金縛り」の初体験だったと思う。それから幾度となく金縛りに襲われることになった。