キッチンとお風呂はそのままで

毎朝すみずみまでハタキをかけて、木肌や畳に触れると、その温かさに心がホッとゆるむ。そのたびに、「ああ、この家に住めてよかったわ」としみじみ思います。手入れをするたびにだんだん居心地がよくなっていき、愛着も増していく。手間暇はかかっても、一度、気に入った住まいで過ごす喜びを知ってしまうと、もう戻れませんね。

とはいえ、あえて目を瞑ったこともありますよ。システムキッチンに取り換えるには約200万円、バスタブを交換すると約80万円はかかると知って、「このままでいいわ」と。今も昔ながらのステンレス製の浴槽に浸かっています。経済的な理由もさることながら、まだまだ現役で使えるものを処分するなんて、と抵抗を感じたことが大きいです。

リビングと続きの部屋を合わせると約16畳と広いので、お客様がいらっしゃるときに部屋を分けて使えたらいいな、と思いました。とはいえ、障子をはめてしまうのもなんだかつまらない……。ふと思いついたのは、箱根の家で使っていた引き戸2枚をパーテーションとして再利用することです。試しに小田原の家の桟にはめてみたら、ぴったり! 思わずガッツポーズしました(笑)。昔の家は規格がほぼ統一されていますから、建具を使いまわせるんです。ほどよく空間を仕切ることができて、大満足。

箱根の家から竹編みの引き戸を運んできてはめ込んだ。上のプロペラは夫の愛機の部品

収納スペースとして新たに造った納戸の扉の取手には、お茶室で使用していた竹の結界(茶席で亭主と客の境界を示す茶道具)を使っています。モノを処分する前に踏みとどまり、「何かに使えないかしら?」と考える。そして新たな使い道を見つけだすのが、パズルをしているようでとっても楽しいのです。

茶道をたしなむ建築士さんのアイデアで、納戸の取手に茶室の結界を再利用