その日は打ち合わせを何とかこなし、自宅に戻った。こんなことがあった、と多少笑って中学1年生の娘に話しながらも、お茶や水を飲むとまだ吐き気がする。ベッドで横になっていると、娘がテキパキ手配してくれ、強制的に近所のクリニックに連れて行かれた。

少し休んだためか、だいぶ元気になっており、薬をもらって帰宅した。熱はないし、風邪でもない。これなら明日の宝塚の東京公演には行ける! いや絶対行く、止めてくれるな、娘よ! と強引に決行することに。

 

とにかく横になりたい。今すぐ寝たい

翌朝コソコソと準備し、薬と経口補水液持参で新大阪駅から新幹線に乗り込む。用心してトイレに近いグリーン車を取った。東京までぐっすり眠れば快復しているはず。ところが、希望的予想に反して、経口補水液を飲んでも吐き気。何も口にしなければ吐き気はおさまるが、脱水症で倒れても一大事になるだろう。劇場で何かあれば、それこそ愛する宝塚に大迷惑をかけてしまう……。

逡巡の末、東京のファン仲間に連絡し、ピンチヒッターで観劇してもらうことに。東京駅構内まで来てくれた仲間に、私は涙目になりながらチケットを渡した。その足で近くのクリニックを探して駆け込み、ブドウ糖点滴を打ってもらう。おかげで快復したのだった。

3年後、大ばか者の私は再び同じことをやらかした。当時、大量の経済データを扱う複雑な仕事を手がけていたが、部下が病気や介護などの事情で次々プロジェクトを離脱。自分ががんばれば何とかなると、夕飯後もすぐにパソコンを開く日々、週末も半日と休まなかった。