その日も出張先で頭痛に悩まされていたが、更年期障害と肩こりのせいだろうと思っていた。仕事の打ち合わせを終え、先方の偉い方々とお昼の会食となる。またもや頭痛からくる吐き気に襲われ、こってりめの中華ランチに手がつけられない。気持ち悪い、でもこのプロジェクトのリーダーだから話さなきゃ。「すみません。ちょっとお腹をこわしていまして、食事はごめんなさい」とお断りした。
駅までのタクシーのなか、必死で吐き気を抑え、車を降りると、お客様と部下にはにこやかに「もう1件伺うお客様がありまして」と告げ、その場で失礼した。とにかく横になりたい。今すぐ寝たい。
帰路で途中下車し、一番近いビジネスホテルを予約し、部屋に入った。カーテンを閉じて横になるが、その間も仕事のメールに返信。休んで気分がよくなると、結局病院に行かず、また仕事の日々に戻った。
激務を終えた半年後の9月、健康診断を受けると、体重は増加し、血圧が最高値を記録。さすがにまずいと夜のウォーキングを始める。歩くのは案外好きで、体重は1ヵ月でするっと2kg減り、やったねと思っていた。
たった2週間で人生が変わってしまった
忘れもしない、19年の10月末。パソコンで仕事をしながら何となく胸を触ってみたら、右胸の下のほうに硬いものを見つけたのだ。ビクッ、これって……。噂に聞くしこり? 直感的にこれはまずいやつ、と思った。乳がん検査をしているクリニックの中から、当日予約できる病院を探し出し、その日の夕方駆け込んだ。