スー 旧来型のダンディズムに囚われるあまりアップデートできず、時代に取り残されてしまうようなことが松任谷さんにはないのかも。

松任谷 だって新しいものを受け入れなきゃ、雑誌とか読んでも楽しめないよね。1ヵ所にとどまっていたら、どんなものにも飽きがきてしまうし。

スー 大衆を魅了するポップミュージックって、そういうことなのでしょうね。みんなの心をとらえるには、時代にのっていくこと。それには価値観の更新が不可欠だから。そうか、売れる音楽を作っていれば、アップデートできるっていうことか。(笑)

松任谷 あはは。もうひとつ、僕は音楽を作り始めた時から、カテゴライズと闘ってきたんですよ。

スー どのジャンルの音楽か、ということですね。

松任谷 カテゴライズすると理解しやすかったり、安心して音楽が聴けるという気持ちは僕にもある。でも自分の音楽はカテゴライズされたくない。

スー 型にはめられる居心地の悪さを知っていることも、松任谷さんが自由な考えができる背景にあるのかもしれませんね。

松任谷 そうだといいけれど。

 

ユーミンと40年以上も一緒にいる理由

スー 男と女の話で、もうひとついいですか。

松任谷 どうぞ。

スー 松任谷さんのエッセイに、ユーミンがラジオで「マウンティングする亭主だ」と話した、とありました。その翌日に、「お父さん(松任谷さんのこと)がいなかったらやってこられなかった」ともおっしゃった。どちらも本音だと思いますが、それでケンカになったそうですね。「お父さんがいなかったらやってこられなかった」と言われて、松任谷さんが怒ったということに私はとても感激したんですよ。

松任谷 えー! そうなの?