スー 知らないこと自体は悪いことではないと思います。知って、納得して、変わってくれるのなら。

松任谷 なぜおじさんは、時代とズレてしまうんだろう。

スー 世の中の変化に合わせてアップデートしなくても、自分の生活には何ら影響がないからだと思います。

松任谷 男って、若い頃には上の世代への劣等感があり、年をとると肉体的に衰えてくる劣等感があり、結局いくつになっても一緒じゃないかと思う。偉そうなこと言ってパワハラする男って、つまりは劣等感のかたまりなんですよ。

スー なるほど。

「相手がどう考えているかわからないけれど、もし生理的に嫌になって別れたとしても、別の人とやり直して今よりよくなるってイメージが持てないからじゃないかな」(松任谷さん)

1ヵ所にとどまっていたら、飽きてしまう

松任谷 僕がもしステレオタイプなおじさんにならずに済んでいるとしたら、それは音楽を作ってきたからかもしれない。ある時期までスネアドラムの響きをどうにかよい音で録音したいと研究を続けていたのだけど、80年代に海外からまったく違うデジタルな音作りが入ってきて。一瞬、僕は理解できなかったの。

スー えーっ! その時期もユーミン(松任谷由実さん)のアルバムは最先端のサウンドで作られていたじゃないですか。

松任谷 だから、そこから変わったんですよ。「スネアの音がどうのこうの」って、ダンディズムみたいなことにこだわっていられないなと。

スー それですよ、松任谷さん!

松任谷 なにが?(笑)