ジャニーさんから教わったこと

私は音楽プロデューサーという仕事を通して、個性豊かな人々との出会いに恵まれました。すでにお亡くなりになった方も多いなか、もう一度会って話したいと思う人に、ジャニーズ事務所を立ち上げたジャニー喜多川さんがいます。

ジャニーさんとは作家の寺山修司さんの紹介で知り合いました。私が日本コロムビアから、新しくできたCBS・ソニーに移籍したばかりの頃ですから、68年頃でしょうか。当時、ジャニーズ事務所に所属していたのは、あおい輝彦さんらがメンバーの男性グループ「ジャニーズ」だけでした。

ほどなくして私は、新しく作られたグループ「フォーリーブス」の音楽プロデュースを引き受けます。彼らはデビュー曲「オリビアの調べ」を皮切りに次々とヒットを飛ばし、ジャニーズ事務所の草創期を支えました。

ジャニーさんの何が凄いかといったら、信念の強さでしょう。たとえば映画『ウエスト・サイド物語』や白虎隊などの物語をもとに舞台を創り上げ、タレントを代えて長年公演し続ける。再演のたびに欠点が改善され、さらに面白く洗練されていく。一つの型をやり続ける強みというものがあることを、私はジャニーさんから教わりました。

ある日、ジャニーさんに呼ばれた私は、15歳の少年を紹介され、彼の持つ新鮮なオーラに驚かされました。これが私と、私の仕事人生における《長男》的な存在となる、郷ひろみさんとの出会いでした。当時、彼は歌手デビューを目指してレッスンを受けながらフォーリーブスの後ろで踊っていましたが、すでに多くのファンがついていた。存在感に《光》を感じる郷さんは、アイドルになるために生まれてきたかのような逸材だったのです。

独特な雰囲気と声も、彼を大スターにするための武器になると私は考えました。思惑通り、「男の子女の子」で歌手デビューするなり大ブレイク。同時期に人気を誇っていた野口五郎さん、西城秀樹さんとともに、「新御三家」と呼ばれるスーパーアイドルになります。それ以来、私はプロデューサーとして郷さんと充実した取り組みを展開することができました。