ジュディ・オングのシングル「魅せられて」(79年2月発売)。阿木燿子作詞、筒美京平作・編曲によるこの曲で、日本レコード大賞を受賞した

火花を散らしていた新御三家

「三人娘」とか「御三家」といって売り出すことには意味がありまして、「3」という数字が重要なのです。赤、緑、青の光の三原色は混ざると白色になる。この作用は人間にも働いて、彼らがより輝くだろうと思ったことが一つ。また、対立した3つの要素が入り乱れることを「三つ巴」と言いますよね。その言葉通り、彼ら3人にライバル意識を持たせ、切磋琢磨してもらうという目的もありました。

歌唱力の野口五郎、躍動的な西城秀樹、王子様的な郷ひろみといった位置づけで、女性ファンたちに「どのタイプを選ぶかあなた次第です」と呼びかけるように売り出した。そして世の女性たちを熱狂の嵐に巻き込んでいったのです。

便宜上そのようなキャラクターに振り分けていたものの、3人は選ばれただけあって素質としては、静の野口、動の西城、そして陽の郷。将来性が高く、時代が運んできたような存在でした。それだけに火花を散らしていたことも事実ですが、その切磋琢磨、競いあうことがアーティストとして成長するための大きな養分になったと思います。

アイドルを売り出していく際に私が心掛けていたのは、デビュー曲や持ち歌が、彼ら彼女らの「成長記録」になっていくようにする、ということ。同じ曲を歌っても、年齢を重ねるにつれて深みが増していく。歌い手とともに、歌も成長するのです。生身の人間としてのリアリティと、人々の想像を搔き立てるアイドルとしての神秘性。その両立ができた人こそが《大スター》といえるのです。