買い物に行くと、スナック菓子やチョコレートを大量買いするようになった。食費節約が至上命令の家計にふさわしくなく、菓子代だけで1万円近くという月も。おかげで家の戸棚はお菓子で一杯。在庫が減ってくると、無性に不安感に襲われる。

運悪く、夫に立ち食いの現場が見つかり、何度か責められたことがあったが、「日がな一日ぐうたらしているお前に対するストレス解消なんだよ!」と、喉元まで出かかる言葉をのみ込んで、なんとかやり過ごした。

 

台所は自分だけのスタンディング・バー

ある日、チョコレートを食べてねっとりした喉を潤そうと冷蔵庫を開けた時、夫の飲みかけのボジョレー・ヌーボーが目に入った。元来、お酒の類はまったく飲めなかったが、甘味でひりついた渇きを癒やしたい一心で、ルビー色の飲み物に思わず手が伸び、喉に流し込む。「うっ、うまい!」。

以前、菓子を初めて立ち食いして口に含んだ時のような快感が、全身にほとばしった。体中が熱を帯びて、ぽわ~っとするような感覚に酔いしれる。口の中で、チョコレートとコラボするワインの風味は絶妙で、一瞬で虜になった。

そのうち、チョコレートにはウイスキーもマッチすることや、和風味のスナックには梅酒、バター風味のクッキーには白ワイン、焼酎や日本酒はどんな種類の菓子の後味も引き締めてくれることに気づき、酒量はみるみる増加。キッチンドリンカーと化してからの私は、ちょっとやそっとのことでイライラしなくなり、ご機嫌な毎日を送っていた。