夫や娘からは、「お母さん、夜は楽しそうだね」などと揶揄されるが、私の悪癖には気づいていない。夫の酒を盗み飲んでいることがバレないように、何本かのボトルから少しずつ減らすように努力したが、いろんな酒類に手を出すものだから、ちゃんぽんになって悪酔いも半端ないのだ。

ある時、食器の後片づけ(と立ち食い、立ち飲み)にいそしんでいたら、夫がキッチンに来て、「お前はいつだって、何をやっても間が悪いんだよな」とひと言。

冗談のつもりで言ったようだが、カチンと来た私は、「ふざけるんじゃねーよ! この大バカヤロー!」と叫び、手にしていた布巾を投げつけてしまったのだ。仰天して目を見開いている夫の姿に、私もハッとなって一気に酔いがさめた。

さらに人知れず苦しむようになったのは、娘たちに以前指摘された健診の数値の悪化と、シワや吹き出物などの肌荒れだ。コレステロール値や、中性脂肪値、ヘモグロビンA1cがガンガン上昇し、要注意信号が点滅。健診結果は家族にバレないように即刻破り捨て、肌のシワや吹き出物はファンデーションの厚塗りでごまかしているが、いつまで持ちこたえられるか、不安は尽きない。

しかし、今夜もキッチンに立つと、心と体が甘美な味覚を求めてときめく。お菓子と酒が織りなす魅惑の味のコラボレーション。人目を忍んでのとろけるような逢瀬が、今まさにこの罪作りな舌の上で……ああ、もうたまらない。至福の味の泥沼に私の身はズブズブとはまり込んでいる。


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