2019年4月に行われた「くまもと復興映画祭2019」で、ディレクターを務めた行定勲監督(左)と記念写真に納まる高良さん(写真提供:セカンドサイト)

役場に1人乗り込んで

高良 先ほどの「町おこしは人おこし」ではないですが、僕が出演している映画『おもいで写眞』でも似たテーマを扱っています。主人公の結子は、夢破れて東京から富山に帰ってきた女性。町役場で働く幼なじみの一郎に、お年寄りの遺影の撮影を頼まれるところから物語は始まります。

最初のうち結子は、つい自分の価値観をお年寄りに押し付けて反感を買ってしまうのですが、一郎や周囲の人たちから影響を受け、徐々に相手に寄り添える人間になっていく、というストーリーです。

バービー 良かれと思ってやったのに、地元の人からすると結子が悪者になってしまうパターンですね。

高良 はい。反対に僕が演じた一郎は、相手の《その人らしさ》を見守り、大切にできる人。演じるにあたっては富山弁に助けられました。

バービー どういう点ででしょう。

高良 僕の中には、毎回役に入る上で飛び越えなきゃいけないハードルが複数あるのですが、方言を話すことでそのいくつかをクリアできる気がするんです。ニュアンスに救われると言いますか。なので方言がある役が来ると「ラッキー!」と思いますね。ただし関西弁以外で、ですが(笑)。関西弁は難しいです。みんな聞きなれていますから。

バービー 結子の気持ちは、私も町おこしをしているのでわかります。

高良 わあ、いつからですか?

バービー 4年前からですね。別に「地元を救いたい!」というおこがましい考えじゃなく、単に自分がやったら楽しそうだなあという気持ちで役場に1人乗り込んだんです。「地元の人は北海道ブランドの素晴らしさに気づいていない。何かできませんかね?」と言いに。もちろんポカーンとされましたけど。(笑)

高良 役場に一人で!?

バービー はい。元日しか休みが取れなかったので、「元日ですけどいてください」と頼んで。「町役場は移住者をずっと募っていて、実際に北海道に住みたい都会の人も多いと思うのに、どうして数字に結びつかないんでしょう? アプローチの仕方が違うんじゃないですか?」みたいな話をしました。

最初のうちは「そんな一気に変わりませんよ」とか「地元の人たちがそれを望んでいないんだから介入しないでください」などと言われましたが、今はやりたい人たちが集まって何かやることについては理解してくれていると思います。