ヤマザキさんの愛猫・ベレンがテレビに出演することになり、家での様子を息子さんが撮影しました。放映された番組を見た人のリアクションは「びっくりした」だったそう。いったい何に驚かれたのでしょうか。(文・写真=ヤマザキマリ)
グローバルな経歴の持ち主、ベレン
新年早々、我が家の猫ベレンが紹介される番組が放映された。このご時世であることと、ベレンが極度の人見知りでもあることから、撮影は近所に暮らしている息子に頼むことにした。
ベレンはポルトガルに生まれ、その後アメリカ、イタリアでの暮らしを経て今は東京に暮らすグローバルな経歴の持ち主だが、この番組の撮影依頼が最初にあったときは、迷わず「うちの猫の撮影? ありえないです」と断るしかないくらい、人見知りで臆病な猫である。息子による撮影であればということで、何とかベレンの日常を記録することが叶った。
私自身は、撮影者が息子であることからかなり気が緩んでいたらしく、髪はボサボサ、洗いっぱなしの顔にパジャマという荒んだ姿で画面に映し出されていた。
何より、この番組を見ていた方たちから口々に「びっくりした」と言われたのは、猫に話しかけるときの私の声色だった。どこかへ電話をかければ、「〇〇さん、ヤマザキっていうおじさんから電話!」と取り次がれるくらい私の声は低い。ハスキーヴォイスとかそんな艶っぽいものではなく、とにかく野太いうえに圧力もあるらしい。だからなのか、小動物を見かけると、無意識に声が高くなる。自分よりも小さな生き物を怖がらせないための気遣いもあるが、何より猫という生き物に自分を受け入れてもらいたいという思いから、衝動的にそんな声色になってしまうようだ。
逆にベレンはベレンで、最近は野太い鳴き声で私に餌を催促するようになってきた。12年の共同生活を経て、ベレンも私に通じる声色を学習したのかもしれない。