演じることの原点に立ち戻って

そんな時、友人がNetflixの韓国ドラマ『愛の不時着』を勧めてくれたのです。観てみると、脚本も演出も本当によくできていますし、出演者たちの演技も素晴らしい。15歳で仕事を始めて以来、一視聴者として無心にドラマを楽しむことはほとんどありませんでしたが、どっぷりハマってしまい──気がついたら元気になっていました。

自分がいる場所とは違う世界で一所懸命生きている人たちと、喜怒哀楽をともにする。そんな体験を通して、「ドラマって素晴らしい」「俳優はいい仕事だ」とあらためて実感しました。おかげで久しぶりにドラマの撮影現場に立った時は、気持ちも新たに取り組めました。演じることの原点に立ち戻ることができた気がします。

振り返ってみると、母の映画を撮影するうちに戦争について考える時間を持てたことも、とても貴重な経験でした。母は、満足に食べられない、明日生きているかもわからない時代に10代を過ごした。それに比べれば今はまだいいと思えたのです。

今、全世界的に立ち止まらざるをえない状況になっているのは、「考えなさい」という人間へのサインかもしれませんね。私自身、この試練を学びのチャンスと捉えて、次に進もうと思っています。