「自分がいる場所とは違う世界で一所懸命生きている人たちと、喜怒哀楽をともにする。そんな体験を通して、『ドラマって素晴らしい』『俳優はいい仕事だ』とあらためて実感しました。」(撮影:大河内禎)
コロナ禍で女優としての仕事がほぼストップし、漠然とした不安にのみ込まれそうになったこともあったと語る原田美枝子さん。その気持ちを救ってくれたのは、あるドラマだったそうで――(構成=篠藤ゆり)

気分が落ち込むと姿勢が悪くなって…

2020年のはじめ頃は、自ら監督・撮影から編集まで務めた映画『女優 原田ヒサ子』の公開に向けて準備をしていました。

認知症の母の人生を辿ったドキュメンタリー作品で、初日舞台挨拶には母を連れて行きたかったのですが、公開予定日の3月28日から、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、映画館などの休業が始まってしまい、翌週の平日だけの上映になり、再上映できたのは緊急事態宣言が明けた6月でした。

外出を控える方が多いなか、映画館に足を運んでくださった方には感謝の気持ちでいっぱいです。なかでも嬉しかったのは、「原田さんの家族を見ていると思ったのに、だんだん自分の家族を見ているような気がしてきた」という感想をいただけたこと。映画公開には厳しい時期でしたが、その後も全国で上映していただくことができて、恵まれていると思います。

とはいえ、女優としての仕事はほぼストップ。この先、世の中どうなるんだろうという漠然とした不安にのみ込まれ、秋くらいから気持ちが沈んでいきました。

心の不調は、体にも影響するのでしょう。腰痛がひどくなってしまい、接骨の先生に診てもらったところ、気分が落ち込むと姿勢が悪くなって、腰椎の神経が圧迫されてしまうのだと教えてくれました。先生は「体も心も浮き立つような、ピンク色の気持ちになることを考えて」と。心が軽くなれば、自然と体も上に引き上げられるようです。