物語は、シーンの積み重ねで生まれる。そして小説は、どんなシーンを書くかも、作家が決めていい。映画やドラマだったら制約があるかもしれないけれど、小説なら、本当に作家が好き勝手決めていいのだ!

だからこそ、作家は悩む。たぶん。この小説を書く時、どんなシーンを描けばいちばん面白い小説になるのだろう、と。

たとえば出会いや別れ。あるいは家族の描き方や動物の記述。そして食べる場面も泣く場面も。たとえ描かれていることは凡庸だったとしても、作家のさじ加減によって、それが名場面かどうか決まってゆく。

さまざまな名場面を紹介する本連載。あわよくば、小説を書く側の人にも読む側の人にも、どちらにも楽しんでもらえるといいな……と思っている所存です。

文筆家の三宅香帆さん

物語の始まりで、ぐっと読者を引き込むには

さて記念すべき第一回。テーマは「出会い」。

これから物語が始まってゆくのだ! このキャラとの出会いがすべてを変えるのだ! とわくわくするような場面になってほしいところだけど。でも出会いって難しいよね。ベタに走りすぎると「食パンくわえてぶつかる女子高生」「クラスにやって来たかっこいい転校生」みたいな、どっかで見たような場面になってしまうし。しかし、出会いがさりげなさすぎると、そもそも「面白くなさそう……」と思われて、読み続けてもらえないし。
そう、物語の始まりは、ぐっと読者を引き込むものじゃないといけない。

ちゃんと読者の興味を惹きつつ、ページをめくらせつつ。それでいて、主人公が無理なく動く場面でなくては。