息子の指導を受けながら

小さいときから図画や工作は好きだったというくんくんさん。パン屋をやめて自由な時間ができたとき、「そういえば私、そういうものが好きやったわと思い出しましてね」。

数年前には映画『この世界の片隅で』を観たことをきっかけに原作マンガに夢中になり、こうの史代さんの絵を模写するうちに「同人誌も出してしまったことがあります(笑)」。好きな作品を利用した二次創作の文化は、もっぱら若者が中心。「75歳オカン制作の同人誌!」と、これまた息子発信のSNSで大いに話題を呼んだそうだ。

『じゃりン子チエ』は、「パン屋を手伝ってくれていた友人が、最近になって『全巻揃っているからお暇な時間にどうぞ』と貸してくれはったので、読んだら面白くて。よーし、今度はこれを立体で作ってみようと思いました」

人物を作るのは初めてだったため、現役の漫画家でフィギュア作りの経験もあった息子さんの指導を受けながら、高さ10cmほどの「テツ」を完成。手芸用に取っておいた木綿の端切れで、小粋なマフラーも巻いてあげた。(※現在はチエちゃん、お婆はんも完成!下記インスタグラム参照)

ちなみに材料費は、クラフト用の無色の樹脂粘土が約800円、24色の水彩絵の具が2000円程度だそう。「筆などの道具は、夫や息子のものが家にいくらでもありますでしょ(笑)。それを借りれば、本当にお金のかからない良い趣味を見つけたなあと喜んでおります」と明るく語るくんくんさんなのだ。


《ルポ》遊び心で日常を愉快にする達人たち
【1】「オカン、天才か?」ツイッターでバズった〈樹脂粘土ミニチュア〉作者は78歳
【2】猫の抜け毛で、個性的な帽子を。テントウムシから鬼滅の煉獄さんまで、無理難題も楽しい
【3】「チェアリング」という楽しみ。椅子を持って「自分の場所」を探す