あれは、間違いなく抗争だった
翌日、おそるおそる家から出てみると、いつもの朝の景色しかなかった。
夢、だったのかな。
しかし、昨夜の抗争の音は頭から離れない。そしてその時感じた恐怖も胸にある。
すると、電話が鳴った。
出てみると警察からだった。
ご丁寧に、昨夜の報告だと言う。
「昨日のですね」
「はい!」
「夫婦ゲンカでしたので」
「えっ?」
「痴話ゲンカですよ、あまりご心配なさらずに」
「えっ?」
昨日聞こえてきた音は、「夫婦ゲンカ」というような遊びのあるものを思わせる音ではなかった。
間違いなく抗争だった。
「いや、あの、『轢き殺す』とかでしたし、わたしが聞いたのは、夫婦ゲンカではない、と思うのですが」
「ほんとにね、お騒がせしましたって、言ってましたので」