「親が応援してくれない」は贅沢な悩み?

著名な若手の音楽コンクールで賞をとったHさんから、「夜遅くまで練習したいのですが、親が門限に厳しいので、十分に練習ができない」という話を聞いたことがあります。

立派に活躍されているし、さぞ親御さんも手をかけたのだろうと思っていたのですが、まったく逆というわけです。「応援する気がまったくない、酷い親です」とも漏らしており、ご両親ももっと応援してあげてほしい、と素直に思いました。

しかしその時、一緒に話を聞いていた知人が一言。「それは良かったね! 親の価値観を押しつけられなくて済んでいるのだから」。

確かに、最近は過干渉気味な親も増えていますし、「応援してくれない」と悩むのは贅沢な悩みかも、とも思わされました。

 

本当に「褒めるのが大事、叱るのは良くない」のか

ある伝統工芸の職人さんが次のように語ってくれたことがあります。

「親方からは叱られてばかりで、滅多に褒められませんでした。口をついて出るのも『まだまだだな』や『大したことねえな』とかで、ずいぶんと悔しい思いをしながら頑張ってきました。だから時々『いいじゃねえか』と認められた時の喜びは半端ではなく、それを重ねて、少しずつ自信を付けました。それなのに、自分が責任者を務める番になって、同じように若手を叱ると、すぐ拗ねてしまう。ついには『どうして褒めてくれないんだ』とまで言われる始末。まだまだだから、褒めていないだけなのに」

こうした傾向は職人の世界だけではなく、褒めることがとにかく大事で、叱ることや挑発は良くないという雰囲気が社会全般に漂っています。

しかし、これからの激変する社会では、自分の行為に責任を持つことがより必要になっていくと筆者は考えています。褒められてばかりで、失敗しても人のせいにする癖が付くと、まったく先に進まない時代になっていくはずです。

たとえば、もし自身の夢に振り回される過干渉な親に、子どもが依存的になるようなことがあれば、何かに失敗した際、子どもは「お父さんのせいで失敗したじゃないか」と親のせいにします。

でも親が放置して、子どもがやりたいことをやっていたのなら、もしそれに失敗しても、自分の責任にするしかありません。

だから音楽家のHさんも、そのことを自覚して練習に励んだからこそ、成長し、成果を残しているのかもしれません。ご両親が意図的にそうされているのかどうか分かりませんが、彼女の場合、現実として距離を置いた態度が良い結果をもたらしています。


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