虚しさを抱え家族を続けていくのがつらくて、あんなに離婚を望んでいたのに、結局のところ、離婚には至らなかった。

ただ耐えただけではない。保険の外交員をしているうちに、世の中には誠実な人はそう多くもないと学んだのだ。これなら夫のほうがよほど誠実で、ましだと思うことも少なくなかった。

金婚式を終えた2年後のこと。かかりつけ医からの紹介で大学病院に検査に出かけたその日、夫の胃と肝臓にがんがみつかった。すでにステージ4という。それからたった2ヵ月後、夫は旅立った。もしかしたら、夫自身もそうと気づかぬまま逝ったのではないか。それほどあっけなかった。

 

夫を亡くし、死にたい病に取り憑かれ

夫が逝き、ひとりになった。自宅の庭には春夏秋冬、常に花が咲いていて、広い家のなかはきれいに整頓されている。健康もまずまずで、悪いところはない。でも、理屈抜きに寂しい。寂しくて、やる気がまったく起こらない。今すぐ死んでもいいと思うほど。なぜ私はまだ生きているの?

落ちこんでうつうつと暮らしている自分を、内心バカじゃないの? とも思う。生きている間、ラブラブだったわけでもないのに。あんなに離婚したかったのに。でも、死にたい、死にたい。死にたい病に取り憑かれたようだ。