会いたい。手をつなぎたい。そんな気持ちになるなんて

教室での先生の指導は厳しい。何年も教わっているが、授業が終わるとさっとお帰りになるのが常だった。

ある日、教室からの帰路、駅近くの歩道橋で熱心に布教活動をしている人に出会った。顔を見て驚いた。なんと先生、その人であった。私のことに気づいたはずだが、そんなことはどうでもよいらしく、聖書の話を長々と説いていた。聖書に関心がない私は、さらなる勉強会の誘いをお断りし、帰宅した。

その後、再び布教中に出会った。夕方でおなかが空いていたので、食事にお誘いしたらすぐに乗ってくださった。そういうことが何度か続き、教室の後、食事をして帰るのが習慣になった。

ある時は、夜のおでかけにも付き合ってくれた。私が応援しているマジシャンが新宿の歌舞伎町でショーに出演するというので、夜でもあるし、ということで一緒に出掛けたのだ。

憧れの先生とお酒を飲みながらショーを見て、とても幸せだった。もはや単なる習い事の先生ではなく、恋焦がれる人。一緒にいられるのは、まさに至福のひとときだった。

 

師匠と弟子の関係に共感して

私の友人に、未婚の母から生まれた人がいる。その人の母親は、あるお稽古のお師匠さんの子を身ごもり、ひとりで育てた。

私は長い間、そのお師匠さんの身勝手さが理解できなかった。男のずるさ、一時の性欲のために女の人生を台なしにしたひどい男だと。

しかし今は違う。常識では産むべきではない子かもしれないが、お師匠さんを愛し、敬い、何が何でも産みたかった女性を応援したいとさえ思う。なぜそんなことを思い出したのだろう……私は彼女と自分を重ね合わせて、錯乱しているのだろうか。