何年にも及ぶ食べ吐きによって、やがて体力が落ち、ケガも増え、そのケガが治りにくくなっているのに気づきました。私はケガをすると、人より気持ちの落ち込みが激しいタイプなんです。最初は減量が目的でしていた食べ吐きですが、そのうちケガで走れないストレスを解消するための手段としてするようになっていきました。

このままだとまずい。吐くのをやめなきゃ、と思ったことも何度かあります。でも体重が増えて走れなくなることや、怒られることが怖くて、結局やめられなかった。

悩みについてチームの誰かに相談したことはありません。マラソンは自分との闘いだから、自分に勝たなければ他人に勝てるわけがない。ここで他人に頼っていたら競技でも強くなれないと、ずっと思い込んでいた。すべて、マラソン競技と繋げて考えてたのです。

 

食べて吐くために万引きを…

初めて万引きをしたのは07年、京セラ陸上部が高地トレーニングのために行っている中国・昆明(クンミン)での3週間の合宿中でした。合宿では普段以上に厳しく生活が管理されます。買い物にも許可が必要で、過食して吐くためのお菓子やパンを簡単に手に入れることができませんでした。

食べてもどうせ吐くのだから、無駄なことをしているのはわかっています。でも食べたいものを満足いくまで食べて吐くことは、私にとってつらい毎日を乗り越える唯一のエネルギー源になっていたのです。

宿を抜け出して食べ物を買いに行くたびに怒られ、お財布も没収されました。自分のお財布からこっそり100元だけ抜きとったのですが、それもすぐ底をついて。ある日、残った2、3元を持ってお店に入ると「あれも食べたい」「これもおいしそう」という思いが湧き上がって抑えられなくなり、気がついたらポケット一杯に食べ物を詰め込んでいた。

捕まったらどうなるとか、会社をクビになってしまうんじゃないかとか、先のことは一切頭に浮かびませんでした。

結局、お店の人に見つかって大騒ぎに。外国人の女性ということでその場はなんとか許してもらいましたが、もう二度とこんなことはするまいと心に誓いました。