ある日のこと。体重を落とすため、いつものように寮で夜中に隠れてエアロバイクを漕ぐ時、汗をかきやすいようにと先にお風呂で体を温めていました。すると湯船で急に気分が悪くなって、タイルの上に吐いてしまったんです。夕食後にほんのひと口のつもりで炭酸飲料を飲み、気がつくと1リットルも空けてしまったのが原因かもしれません。
お風呂を出てから体重を測ると、入浴前よりも減っていました。その時、頭に浮かんだのはたったひとつ。「やった! これで好きなだけ食べられる」ということ。
それをきっかけに食べ吐きを覚え、以来、毎日の生活がずっと楽になりました。食べたいものを存分に食べられ、全部吐いてしまえば自然に体重も落ち、指導者に怒られることもなくなった。いいことずくめだと思っていたんです。
何年にも及ぶ食べ吐きによって
ーー2005年名古屋国際女子マラソン優勝。同年、世界陸上ヘルシンキ大会6位。07年大阪国際女子マラソン優勝。積み重ねる華やかな戦績の裏では、摂食障害が確実に原さんの心身を蝕んでいった。
選手として注目を浴び始めると、常に勝たなければいけないというプレッシャーが大きくなりました。周囲から「試合に出るからには優勝じゃないと意味がない」と言われ、自分自身も「絶対に結果を残さなければいけない」と。
毎日ものすごい量の練習やトレーニングをこなしながら、食べ吐きも続いていました。ある時チームのキャプテンに吐いているのを気づかれて、「そんなことを続けていると死んじゃうから、やめたほうがいい」と言われたことがあります。でもその時は競技で結果を出せていたから、そんなことあるわけがないと思っていた。