夫の浮気で離婚、リーマンショック…

従姉のたった一人の肉親である父親は若くして認知症になり、施設に入所することに。すると、隣人から「空き家になった家を買いたい」という申し出があり、整理好きの彼女は「これはいい機会だ」と喜んですぐに売りました。実家には、従姉一家が帰省した時のために父親が用意した真新しい家財道具があり、家を売るためにそれらを処分すると言い出したのです。

「羽毛布団も炊飯ジャーも掃除機も、新しくてきれいで、処分するのはもったいないよ。あなたのうちは大きなガレージもあって部屋数も多いのだから、そこで保管したら?」
と私が言うと、

「持って帰っても邪魔になるだけよ!」

と笑われました。

でも、あまりにもきれいなので、どうしても捨てることに納得がいきません。了解を得て私がもらうことにしました。狭いわが家に場所を作って保管することに。それが数年後、思わぬ形で役立つとは、この時は夢にも思いませんでした。

彼女は上の子が中学に上がるとすぐに離婚しました。理由は夫の浮気だったと聞いています。夫がいくら謝っても、どうしても許せず、子どもを連れて家を出て行くことを選択。ついに夫まで処分してしまったのです。

慰謝料もなし、養育費もなし。収入はひとり分しかありませんが、引っ越しにはお金がかかります。従姉は嫁入りの時に持ってきた婚礼家具セットもとっくの昔に処分していたので、子どもたちと暮らすことになったアパートに置く家財道具がありませんでした。

「そうだ、譲ってもらった家財道具がある!」。思い出した私は、彼女に返すことにしたというわけです。

その後すぐにリーマン・ショックがあり、彼女は業績の悪化した会社を辞めました。もうかつてのような収入はありません。何も買えなくなったけれど、あっけらかんとして、「ま、人間元気ならなんとかなるわよ」と笑っています。


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