過密社会では障害がふえる
動物集団には、生存に最も適した密度があって、個体数がそれ以上になるのも、それ以下になるのもよくない。とりわけ、過密と過疎は致命的である。過密がいけないのは、第一に食物不足に陥るからである。
過密の害はそれだけではない。カキを養殖するときは、カキの幼生をバラバラに離しておく。自然のままの状態にしておくと、同じ場所に無数にくっつき、ごく一部のものだけが正常に成育し、残りは混み合った場所に体を合わせて細長い体形になったりして生き残ろうと努めるが、結局は個体数過剰のために死んでしまうのである。過密都会の子供たちが俗に青びょうたんと呼ばれるような情けない肉体しか持てないのと似た現象である。
過密状態は個体間のストレスを増加させる。その結果、さまざまの障害が起こる。アメリカのフィラデルフィアの動物園では、ある動物を繁殖させてやろうと計画し、どんどんふやしていったところ、それにつれて動物の心臓病が倍増してしまったという。ストレスの結果として、ある動物は生殖能力を減退させ、ある動物は成長速度が遅れる。また、いままでとも食いをしたことがなかった動物が、密度がある程度以上に高くなるととも食いをはじめるという現象もしばしば観察されている。ときには集団発狂でもしたかのごとく、水に飛び込んだりして集団自殺をとげる動物もいる。