中公新書ラクレ『「定年後知的格差時代」の勉強法』(櫻田大造著)

オバマも、トランプも、バイデンも「学歴ロンダリング」

さらに国際的に見ると、レベルの高い大学院への進学や、より専門的な学位を得ることはおかしいことではまったくない。むしろそのほうがカシコイやり方だととらえられている。

バラク・オバマ(Barack Obama)元アメリカ大統領も、まずはオクシデンタル大に入ってから、ニューヨーク市の名門コロンビア大に編入。最後はハーバード大ロースクールで法務博士号(JD)の学位を取っている。

ドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領も、カトリック系のフォーダム大からペンシルベニア大へと、編入でグレードアップしている。さらに、ジョー・バイデン(Joe Biden)現大統領ですら、地元のデラウェア大からシラキュース大ロースクールを修了(JD)している。

元・前大統領も現職大統領も三人とも「完全な学歴ロンダ組」なのである(現・大統領夫人のジル・バイデン〔Jill Biden〕氏に至っては、五五歳で母校のデラウェア大学院から教育学の博士号まで取得して、短大〔コミュニティ・カレッジ〕で教鞭を執っている)。

欧米を中心とする先進民主主義国では、過去20年間で、このような「学歴ロンダ」も含めた学位を非常に重視するようになった。むしろアメリカ・カナダなどは、いわゆる「学歴ロンダ」がフツーであり、「学位(どこの大学院を修了してどのような肩書=degreeがあるか)」社会である。日本の大学学部卒は、今や欧米では日本の高卒に相当するといった感覚だ。

換言すると、欧米では日本で言う高卒は大卒にあたり、大卒が修士という感じになっている。このように、欧米主要国では、「学歴=学位」のインフレが起きているのだが、その背景にあるのは、定年退職制度の廃止とともに、年配の高学位層がなかなか現役を退かないことも挙げられる。

「学校歴社会(東大法学部が文系の最高学歴で就活に有利! といった大学学部卒のランク付け)」は、実は日本特有のものであり、かなり特殊である。ガラパゴス化した日本の「学校歴」重視は、国際社会の中ではデメリットになることもある。たとえば、修士号以上の学位が必須な国際連合(国連)関係の国際公務員になれないように。