日本でも社会人院生がブームに

このような「学歴ガラパゴス社会」の日本でも、今や社会人院生が修士課程に入り直し、学び直そうとすることが一つのブームになっている。18年度のデータによると、修士課程入学者数約7万4000人のうち、社会人は10%を上回る8000人もいた。同年度の博士課程における社会人入学者は約6000人に上り、入学者総数の1万5000人のうち42%以上を占める数字だ。

たとえば、ロバート・フェルドマン(Robert Feldman)東京理科大客員教授によると、2020年の経営学研究科の院生平均年齢は43歳。中には60歳代のシニア層も在籍していて、オンライン授業を含め、熱心に勉強しているそうだ。

このような例が今後はトレンドになっていくと思われる。キャリアの途中で再教育を受けてから再度働いたり、働きながら大学院に通う欧米型ジョブも、人事や労働市場の流動化とともに、日本でも根付いていくだろう。

いわゆる士業や個人経営的な仕事だと、学び直しは時間面で有利だし、やる気と実行力でかなりのレベルまでいける。

たとえば、京大大学院のホームページに掲載されている京都先端科学大客員教授の村井淳一氏の例が面白い。公務員を経て税理士になり、38歳で京大院修士課程に入学。その後アラフィフで博士課程を単位取得満期退学しているが、仕事を続けながら修士と博士課程で学んだことになる。

意外に知られていないことだが、この記事で紹介したように、学部ではなく大学院に入学し、修士以上の学位を取るほうが、学部入学よりもかなり楽なのである。

※本稿は、中公新書ラクレ『「定年後知的格差」時代の勉強法』(櫻田大造著)の一部を再編集したものです。