人は人によって楽になる

わたしは何度か、1人の看護師さんに弱音を吐いた。

不思議だが、その看護師さんが来てくれると楽になるような気がした。特に何かをしてもらうわけではないのだが、ただ検温してくれるだけだったとしても「楽になる」という感覚が確かにあった。
心で寄り添ってくれた、と感じたからかもしれない。

医学はとても進歩しているのだろう。だけど結局のところ、人は人によって楽になり、救われるのかもしれない、とこの時に思った。

愛車の運転席の青木さん(写真提供◎青木さん)

わたしは数年前に亡くなった父のことを思い出した。

父も何年もがんを患っていた。
父は私が高校生の頃に母と離婚していたので、1人で愛知県に住んでいた。

私は闘病を続ける父に会いに行き、こう言った。

「お父さん、東京のさ、なんかほら、最先端のがんの治療みたいなもの、受けてみない?」
「お父さんは、あそこの病院でいい」

父が「あそこ」と言ったのは、地元の通い慣れた病院のことだった。