蜘蛛の巣のようなセーフティネットこそ必要

穂子 ここ数年、「家族の絆」という言葉がよく使われるでしょう。私は怖いなと感じている。「絆」という言葉は、1本に結ばれなくてはいけないと人に思わせる働きを持つから。子育てにおいても、介護においても、本当に苦しい時、その言葉が呪縛になって自分の首を絞めることになりかねない。

 そうだね。

穂子 絆に象徴される1本の綱ではなく、人と人との点どうしのつながりが大事かな。「沈没家族はあなたと子どもにとって何でしたか」と改めて聞かれると、蜘蛛の巣みたいなセーフティネットだったと思う。いろいろな人とのつながりが派生しているから、パッと落ちてもどこかに引っかかる。

 映画を見て、自分たちでコミュニティを作る育て方もあるのかと感心してくださった方も多いけど、同時に行政にももっとがんばってほしいな。

穂子 同感! 最近は政治家から「自己責任」とか「自助」といったことがよく言われるけど、そんな言葉、夢も希望もないよね。

 僕は今、穂子さんみたいな子どもを育てた実紀代さんの足跡を調べてみたい。亡くなる前の6年間、一緒に暮らしていたのに、僕はみんばに対して何もできなかったという思いがあるから。それと、穂子さんの今の活動にも興味があるなぁ。自分の家を障がい者やお年寄りが集まる場にしたり、ヘルパーステーションの事業を起こし、一方で鶏を飼って卵を売ったりとフル回転だよね。

穂子 障がいのある人、認知症の人、それぞれ専門の施設で過ごしたらこういうサービスを受けられますよ、というのとは違うことをやりたい。そもそも地域の中には、いろいろな人が混在しているわけだから。来たい人が過ごしたいように過ごせて、出会える場所を提供したいなと思って、3年前に法人も作ったわけ。弱小法人だから、継続するのは大変だけどね。

 忙しすぎるみたいだから、健康には気をつけてほしいな。

穂子 ありがとう。