第三次ブームを起こしたものの正体

ともあれ21世紀となった今、スニーカー市場はいまだかつてない大きなエネルギーを持つようになった。

今現在、デジタル化した世界に適応できている20代の若者だったら、この現状を特に疑問視しないのかもしれない。しかし1990年代のスニーカーブームを経験した世代にとっては、違和感があまりに大きく、素直には受け入れがたい現実も多く含まれている。

90年代のスニーカーブームをけん引した祥伝社の雑誌『Boon』(写真:中央公論新社)

異常とも言える今のスニーカーブームは、間違いなくインターネットの世界的な普及に関係している。そのため、良くも悪くもデジタルを駆使して欲しいものを手に入れられる世代と、お金で解決するしか術(すべ)のない世代とを見るだけでも、まったく違う価値を持ち得ているように感じられる。

スニーカーは健康的な社会を推進するという、非常に大きな役割を担う一方、俗物の対象にもなってきた。最近では国境を越えてファッションアイテムを求める外国人らが、転売目的でプレミアムアイテムを狙って殺到。買い占めをしたり、行列で暴れたり、といったマナーの悪さが日本のワイドショーで報じられるなど、ネガティブなイメージが広がったこともあった。

しかし、思えば1990年代も人気スニーカーである「エアマックス」や「エア ジョーダン」を巡る暴動や強奪、盗難事件が絶えなかった。もちろん、定価からかけ離れた値段で売買されるような転売ビジネスも、だ。今ではそれが単にネットの世界へと移り、そこで形を変えて行われているだけなのかもしれない。