拡大する「転売」市場

一方で人気とされるスニーカーは一地域でのブームにとどまることなく、世界規模で人気を獲得することになった。それとともに、メーカーとは離れた場所で、そして定価と大きくかけ離れた値段で、ユーザー同士で売買される格好の商材になる。いわゆる「転売」である。

その盛り上がりは転売マーケットを飛躍的に大きくし、StockX に代表されるが、今や株価のごとくリアルタイムで上がり下がりするスニーカーの値段を見て、投資目的で売買するためのサービスまで登場した。

そうした、もはやスニーカーそのものからかけ離れた市場が拡大するにつれ、本来シンプルであるはずの「欲しいスニーカーを買う」という行為が、これまでになく複雑怪奇なものになりつつあるのも事実だ。

最近では、人気スニーカーを購入するために指定されたスニーカーを履いて行列に並ばなければならない、つまりドレスコードを指定するショップまで出てきている。

BTSが着用したこともあり、定価の10倍以上で売買されるナイキ「ベン&シェリーズ ダンク SB」。WORM TOKYO提供(写真:中央公論新社)

もちろんこれも転売を防ぐ名目で設けられたハードルだが、かつてのスニーカーブームと、デジタル化した社会のもとで今起きているいわゆる「第三次スニーカーブーム」は、第一印象として異なる印象を覚えざるをえない。