かつて大ブームを起こしたナイキ「エア マックス95」。著者私物(写真:中央公論新社)

 

2021年現在、空前のスニーカーブームが起きている。お洒落着や通勤用のスーツなどに合わせて履きこなす女性も街中で多く見かけるようになった今、人気スニーカーは発売即完売。定価の数倍に高騰するのが当たり前となり、転売サイトが活況を呈している。その状況を見て、雑誌『Boon』(祥伝社)や『UOMO』(集英社)に長く携わってきた小澤匡行氏は「今のブームもかつての『エア マックス95』ブームも、その本質は変わらない」と指摘する――。

ナイキの売り上げは10年間で倍増

1964年に前身となるブルー・リボン・スポーツを設立し、今や世界最大のスポーツ関連商品メーカーとなったナイキ。その売上高は、2006 年から16年という、たった10年の間に倍増した。

2006年といえば、ナイキはミッドソールを用いない360度エアの「エア マックス360」を発売したことで、ソール開発の歴史に一区切りつけた年である。

一方、マーク・パーカーCEOとアップルのスティーブ・ジョブズCEOが共同プレゼンテーションを行い、スニーカーとデジタルを融合した革新的パートナーシップを組むことを発表した年にもあたる。

世界ではデジタル音楽の売り上げが急激な伸びを見せ、グーグルがYouTube を買収した年でもあった。なおこの年、世界のインターネット利用者がおよそ10億人に、ウェブサイトの数は1億を突破したとされ、その頃の日本では、政府が「ITの構造改革力で日本社会の改革を推進する」という戦略を掲げている。

こう聞くとつい最近のことと思われるが、デジタルの力で世界各国が結ばれてインターネット上の世界が急速に広がると、同時にスニーカーの可能性も爆発的に広がることになった。