「人数」と「コミュニケーションの深さ」というSNSの問題

SNSは、ある程度のコミュニケーションを可能にしましたが、対面ほど濃密ではありません。そのため、「私があなたを気に入っている」という事実を伝えようとしても、正確には伝わらないのです。仮に伝わっても、相手がいまひとつ実感できなかったり、疑り深い人であれば「そう思わせたいから心地よいことを言っているだけではないか」と勘ぐったりしてしまいます。

現状、人数の問題と、コミュニケーションの深さの問題を抱えながらSNSを利用せねばならず、利用方法は二極化傾向を見せています。

つまり、浅いコミュニケーションを多くの人々ととって人間関係を広めようという方向性。もうひとつは、限定された仲間と深いコミュニケーションをとって人間関係を深めようとする方向性です。

両者は、コミュニケーションの形態が違うので、元来は分かれていました。古くは掲示板と手紙、より最近のメディアでは放送と電話です。

インターネットが張り巡らされスマホが普及すると、放送と電話の境目が不明瞭になりました。SNSはその最たるもので、人間関係を広めることと、深めることがそれぞれできるのです。

ところが、それらはやり方が違っていて、同時にはできないのです。仮にSNSというメディア側で技術的な準備が整ったとしても、人間側がそれに対応できないのです。

変わるコミュニケーションに私たちが対応できていない(写真提供:写真AC)

従来では、自分の意見を言うのに校内放送を利用するときと、誰かに向けて電話をするときでは、それらのメディアを使う時点で、浅くか深くかのスタンスが決まっていました。それが、自分の意見を言うのにSNSを利用するとなると、どのような気持ちでSNSに参加するかによってスタンスが異なってくるのです。

つまり本来ならば、SNSの参加者がコミュニケーションの場ごとに合意していなければならないことが、合意されていないままコミュニケーションが始まってしまっているのです。